日本のサービス文化は、いうまでもなく、基底となる日本文化が作り上げてきたものです。きめ細かさや、精神性のあり方から、世界でもまれな高品質な職業文化だといわれることもあります。「お客様は神様」ということばがあるように、お客様に高いサービスと価値を提供しようという意識が、店舗や店員側にあるということもできますが、そのような職業上の倫理観であるというよりも、日本人もしくは日本社会全体に染み付いている文化であるといえるでしょう。
特に、近年はしっかりとした「健全な消費者意識」が広がり、食品偽装や詐欺まがいの商売を行う店、企業を監視し、自らの権利を主張するということが普通になってきました。このような意識は消費者にとって重要なリテラシーです。このような「目の肥えた消費者」が増えることはお店・企業のサービス品質の競争を促すことになり、ひいては日本経済の活性化につながるでしょう。
そのような権利意識を持った消費者は、ある場面では、医療人にとって「患者」になるわけです。「昔はこうだった」「これで通用してきた」という考え方は今の消費者文化を身に着けた患者には理解されないでしょう。患者、この場合はクレームをむやみに言い放つ患者は「悪」であり、そんな患者には対応する必要はない。自分たち(医療人)は、社会に貢献するしっかりとしたサービスを提供しているのだ、一人の悪質クレーマーに対応する暇はない。そんな論理も頭に浮かぶかもしれません。
マスメディアが面白おかしく、無理難題を吹っかけてくる悪質クレーマーのトラブルを扱うため、「クレーマー」=「悪質なクレーマー」というイメージが広がっています。しかし、これは極々一部の現象をとりあげ、すべてのクレームを悪質よばわりすることにつながるかもしれません。
そもそも、悪質クレーマー(クレームテロ)は大昔からありました。ほぼ悪質クレーマーはプロであり、そもそも一般の消費者の位置づけとは異なる人々です。これらの特殊な人々があなたのお店や企業に現れるのは極めてまれなのです。
「クレーマー対策」というと、「理不尽な悪質クレーマーにどうしたら勝てるのか」ということがテーマになりがちですが、まるで「どうしたら河童に負けないか」を議論するかのようなことです。いるかいないかわからないケースを勝手に思い浮かべ、イメージトレーニングしてもしょうがありません。
医療機関のクレーム対応・対策の担当者がするべきことは何よりも「顧客(患者)満足」です。患者に満足してもらうためにどうしたらいいのかがクレーム対応・対策の本筋なのです。
最良の医療サービスを提供している医療機関では悪質クレーマーさえ手出しできない完璧なマネジメントができているはずです。そもそも悪質クレーマーに狙われるようなスキを作ること自体がマネジメントの崩壊ということができるでしょう。
最良の医療サービス提供とは、テロさえも防御できるような、医療機関のサービス提供を持続していける体制(セキュリティ体制)を構築しているかということも含めているのです。
